コラム

入れ歯を何度もつくり変える必要はありません!

よく噛めて痛くない,綺麗な入れ歯治療

院長の遠藤義樹です.入れ歯を何度作り変えてもうまくいかない患者さんが多く来院されます.

このような患者さんに対して,当院で心がけていることはズバリ「入れ歯を入れる前にお口の環境(条件)を整えること!」です.

歯科医師が「口腔内前処置」と呼んでいるお口の環境づくりのための処置を適切に行うことが,長期経過の良い入れ歯づくりのポイントとなります.

別コラムで詳しくお話しいたしますが,入れ歯は歯を失ってしまった歯ぐき(顎堤)で噛む力を負担してもらいます.つまり,入れ歯は歯ぐきの粘膜(顎堤粘膜)にぴったりとフィットさせて,その上に噛む力(咬合力)がうまく加わることで機能します.その際,変な方向に力が加わったり,入れ歯がズレることで粘膜に余計な力が働き,「噛むと痛い!」「入れ歯が合わない!」という症状につながります.

 (蛇足ながら,最近「ノンクラスプデンチャー」や「シリコン入れ歯」という柔らかい素材の入れ歯が注目されています.これらの入れ歯を使用した経験のある患者さんはお気づきなのですが,「柔らかい」素材の入れ歯は噛む力を一時的に逃しているだけであり,長期間の安定した食生活を送るに適しておらず硬いものを食べるときに力が入らない構造になっています)

そこで次の2つの条件を考慮して整えていきます.

1. 入れ歯に適した噛み合わせ(咬合)の条件

総入れ歯の場合はアゴで噛む位置のこと(下顎位)を示し,部分入れ歯の場合は残っている歯の3次元的な位置のことを示します.入れ歯が機能するときにこれらの条件を入れ歯に適するように整えないと,歯ぐきに加わる噛む力がうまく作用しないばかりか,入れ歯が「ガタつく」ことになるので,「痛い!」「入れ歯が合わない」となってしまいます.

2. 入れ歯に適した歯ぐき(顎堤)の条件

 噛む力を負担する歯ぐきそのもののことを示し,炎症を起こした歯ぐき(義歯性潰瘍,義歯性口内炎)に新たな入れ歯を入れるのは無理がありますし,ブヨブヨと動く歯ぐき(フラビーガム)に入れ歯を入れても噛む力を負担できず,これまた「痛い!」「入れ歯が合わない」となってしまいます.

これらの2つの条件を整えることが,失敗しない入れ歯づくりのポイントになります.

以前の入れ歯によっていじめられて炎症を起こした歯ぐき(顎堤)や,噛む力が適切に加わらなかったことによってブヨブヨと膨らんだり(フラビーガム),変に増殖してしまった歯ぐき(義歯性線維種),あるいは元々歯があったときからズレてしまった噛み合わせ(下顎位)や,残った歯の位置異常などが存在すると,噛むたびに入れ歯が安定せず,新たな入れ歯を作ってもうまくいきません. 

当院では,入れ歯をつくっていくときに,まずはお口の状態が入れ歯に適しているのかを診断します.

その上で,

1. 現在の入れ歯の問題点を解決(義歯修理)しながら条件を整えていく場合
2. 一時的かつ治療目的のための新たな義歯(治療用義歯)を早期につくって,使用してもらいながら条件を整えていく場合

このどちらかを患者さんと共に考えて選択してもらった上で,義歯治療(口腔内前処置と義歯製作)を進めていきます.

「入れ歯を入れる前にお口の環境を整えること!」が失敗しない入れ歯づくりのポイントであり,またつくった義歯が長持ちするポイントです.

何回つくってもうまくいかず入れ歯にお困りの方は,ぜひ一度当院へご相談ください.