侵襲性歯周炎/若年性歯周病

侵襲性歯周炎とは

仙台で侵襲性歯周炎の検査は当院へ

歯周病は高齢者の病気と思っている方は多いのではないでしょうか。実は、歯周病は若い世代の方であっても注意が必要な疾患です.10〜30歳代で歯槽骨が急速に溶けてしまう歯周病を,侵襲性歯周炎といいます(以前は若年性歯周炎と呼ばれていたこともありました).

2017年11月に世界各国から100名以上の歯周病学分野のリーダーがシカゴに集結し,アメリカ歯周病学会(AAP)・ヨーロッパ歯周病学会(EPP)共催のワークショプが開催され,1999年に作成された歯周病分類のアップデートのための議論が行われました.そこでの成果として2018年に歯周炎の最新分類が発表されました.この最新分類では,侵襲性歯周炎という言葉がなくなり,ひとつの歯周炎としてまとめられ,1歯周炎の重症度を示す指標の「ステージ」と歯周炎の進行度とリスクを示す「グレード」で分類されることになりました。

2022年に日本歯周病学会が発表したガイドラインでは,これまでの分類法である「慢性歯周炎か侵襲性歯周炎か」を記することになっているので,ここでは「侵襲性歯周炎」という言葉を用いて説明します.

歯周病とは

歯周病は歯磨きによる磨き残しなどで生じた細菌の塊であるプラーク(バイオフィルム)が原因となって発症します.プラークは時間の経過とともに,歯石という石のように硬い成分に変化します.

歯石の中では歯周病菌が増殖し続けながら毒素を排出し,それによって歯ぐきなどに炎症が起こります.病態が進行すると,歯と歯ぐきの間に「歯周ポケット」とよばれる溝ができるようになります.歯周ポケットに歯周病菌が入り込むと,やがて歯を支えるあごの骨である歯槽骨が溶けてしまいます.この状態が歯周炎です.

本来、この歯周炎は年齢とともに発症リスクが高まる傾向があり,40代以上の2人に1人は歯周炎を患っていることがわかっています。しかし,その病態が10〜30歳代の若年層でも起こる場合があるのです.

注意が必要なのは,病態の進行スピードです.40代以上の方が発症する一般的な歯周病と比べると,侵襲性歯周炎は急速に進行することがわかっています.また,自覚症状がない場合も多く,気がついたときにはすでに重度になっているということも少なくありません.

侵襲性歯周炎の原因

歯周病発症のリスク要因と感染経路とは

侵襲性歯周病は,患者さんが歯周病菌の影響を受けやすい体質であること(遺伝的要因),また特定の歯周病菌に感染することで発症すると考えられています.

歯周病菌は何十種類も存在しますが,この中でもA.a 菌(アグリゲイティバクター・アクチノマイセテムコミタンス)に感染していると,侵襲性歯周炎が起こりやすいといわれています.

A.a菌は一般的な歯周病菌よりも強い毒素を排出する特徴があり,たとえ日々しっかりとケアをしてプラーク(バイオフィルム)の量が少ない場合でも,歯ぐきに炎症が起こりやすくなります.

当院でも侵襲性歯周炎と診断された方の多くが,このA.a菌に感染していることがわかっていますが,そもそも歯周病自体の進行速度は患者さんの体質(細菌に対する免疫のはたらきなど)によって異なります.そのため,侵襲性歯周炎と診断された方が必ずしもA.a菌に感染しているとは限りません.

A.a菌(歯周病菌)の感染経路

A.a菌に限らず,歯周病菌の感染経路のほとんどが唾液感染です.唾液感染は,家族で食器を共有することなどで起こります.お父さんやお母さんが侵襲性周囲炎を発症していた場合,お子さんにも感染させてしまうリスクがありますので,一度,検査することをおすすめいたします.

A.a菌(歯周病菌)の検査方法

A.a菌がお口の中に存在しているかどうかは,PCR法という検査方法(歯周病源細菌検査)で調べることができます.PCR法は新型コロナウイルス感染症を調べる際にも用いられたため,よく耳にした方は多いのではないでしょうか.PCR法は顕微鏡では判別できないほどの小さな細菌の遺伝子を調べて,細菌の種類を確認するときなどに有効な検査です.

侵襲性歯周炎の治療

仙台で侵襲性歯周炎の治療は当院へ

一般的な歯周病の治療と同様に,まずはプラークコントロールを実施し歯石を取り除きます.ただし,一般的な歯周病と比べて侵襲性歯周炎の場合は炎症が起こりやすいため,3ヶ月に一度を目安に歯科医院を受診し、定期的な口腔ケアを受けることが重要です.

当院では一般的な歯周病検査に加えて,歯周病源細菌検査,CT検査,血液検査などを行って,歯周病の病態とその原因を明らかにした上で,歯周基本治療(歯ブラシ・食事・生活習慣指導,スケーリング・ルートプレーニング,咬合調整,虫歯治療,根管治療,暫間補綴装置装着,歯科矯正治療など)を進めていきます.

病態や年齢を考慮した結果,以下に述べる歯周組織再生療法などの歯周外科治療を行うこともあります.

歯周病に関する治療方針や当院の特徴はこちらをご覧ください。

歯周病治療

歯周組織再生療法

歯槽骨が溶けてしまった場合,その再生を促す歯周組織再生療法という治療法があります,一般的な歯周病の中でも重度のケースや,骨が少ない場合でのインプラント治療でも,この治療を行うことがあります.

まずは歯ぐきを切開して,たまった歯石を取り除き,歯槽骨が溶けたところに歯槽骨を再生させる特殊な薬を注入します.注入する薬は主に2つの種類(リグロス,エムドゲイン)があります.また骨補填材を使用することもあります.患者さんの口腔環境やご要望に合わせて選択いたします.

歯槽骨が再生できれば,将来的に歯を失うリスクを軽減できます.また,むし歯や歯周病,歯の破折などで天然歯を失った場合でも,インプラントを使う選択肢を残すことができます.

以上のように,歯科の分野では医療の進歩によってさまざまな治療が可能となりましたが,疾患を早期に発見して,早期に問題提起し,早期に適切な治療を受けるという基本は変わりません.

日々のセルフケアでお口の中を健康な状態に保ちながら,たとえ自覚症状がないという方でも,1年に1度は歯医者さんを受診して検査を受けることを心がけましょう.